資産運用の基本は ①「資産分散」②「時間分散」③「長期継続」
前回の記事でご覧頂いた通り、老後に備えて金銭面の準備が必要と考えている方は非常に多いですが、一方、具体的な対策の方法が分からず、実際の準備はしていないとの回答の割合が非常に高いことが分かりました。
今回、具体的な対策の方法が分からないという方のため、資産運用の基本について簡単にまとめてみたいと思います。資産運用にあたっては、①「資産分散」、②「時間分散」、③「長期継続」、この3点を心掛けることが大切です。以下、それぞれについて具体的に説明します。
1.複数の資産に投資すること
①の「資産分散」とは、株式や国債など特性の異なる、すなわち値動きの異なる複数の資産に投資することです。一般に景気が良い時は株式の運用成績が国債を上回り、景気が悪い時は国債の運用成績が株式を上回る傾向があります。この場合、株式と国債の2資産に分散して投資することによって、資産全体で景気による運用成績の変動の抑制を図ることができます。このような「資産分散」効果は、複数の国や地域、通貨を組み合わせることで、さらに高まることが期待できます。
2.時期を分けて投資すること
②の「時間分散」とは、一度にまとめて投資をせずに、時期を分けて投資することです。例えば1年で12万円の投資を考えている場合、1年で最も価格が安い瞬間を見極めて、そのタイミングで全額投資することは現実的ではありません。むしろ価格の変動を過度に気にせず、毎月1万円ずつ1年間定額投資を行った方が、価格が高い時には少ない数量、価格が安い時には多い数量を購入することになるため、単位あたりの価格を抑制することが期待できます。
3.長期的に継続すること
③の「長期継続」とは、時間を味方につけることです。一般に投資期間が長いほど、運用成績の変動は小さくなる傾向があります。例えばある国の株式を保有していて、その国の景気後退期が1年続いた場合を考えます。景気後退期を含む投資期間が2~3年程度であれば、その国の株式の運用成績は景気後退期の悪影響を大きく受けてしまう恐れがあります。一方、投資期間が10年超であれば、悪影響の度合いは薄まり、また景気循環による景気回復の恩恵を受けることも考えられることから、ならしてみれば運用成績の変動はより小さくなる可能性が高まります。
資産運用や投資については、難しい、十分な時間が割けないという方が多いと思われます。ただ投資の基本は、①「資産分散」、②「時間分散」、③「長期継続」を心掛け、運用成績の変動を資産全体で抑制するという、とてもシンプルなものです。投資は早く始めればそれだけ早く習熟することができ、意外にシンプルな基本概念を実感頂けると思います。それでもやはり難しいと感じられた場合は、資産運用の専門家にお任せいただくのも一つの選択肢です。
三井住友アセットマネジメント シニアストラテジスト 市川 雅浩
旧東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。