一生付き合える最高の椅子に望む3つの条件と創り方
その椅子の色、硬さ、材質、手触り、匂い、重さ。もっと柔らかいほうがいい、もっと落ち着いた意匠のほうがいい、派手か地味か、アヴァンギャルドかコンサバか。こうした希望の数々は他にも時計や靴へ抱くこともあり、その人自身の生き様や人柄から滲み出てきた自分だけの嗜好が形になったものです。
高級家具の部類に入るブランド家具であっても、一生使うに値すると感じるかどうかは人それぞれ。様々な特徴が複雑に絡み合ってフィット感や愛着は生まれ出てくるもの。究極的に表現するなら、自分の内面が隅々にまで映し出されていることで一生座り続けたいと思える椅子が生まれるということ。どこかに違和感が残っていれば、肌に合わないばかりか、そこから妥協が始まって自身の好みまでが曖昧に。
価格が選択基準の第一条件だったのは若かりし頃のこと。これからの人生を豊かに彩って満足感を与える椅子は、より正直な自分が知っています。耐久性の面でも全て一生モノであることは前提条件。自分のことをよく知り尽くしている方ほど、クリアすべきポイントが明確化されていることでしょう。
しかし、このように理想的な椅子を追い求めても、全ての条件を揃えた完璧な椅子が目の前に現れればの話。
30歳、40歳と年々速くなってくる時間に流されて忘れがちですが、これから本当に欲しい物を手に入れる機会が訪れる保証はありません。評判の家具屋を巡るというのも何か違う気がします。
インターネットは様々な商品を検索するのには便利ですが、現物を触って実際に座って、その品質の良さ、身体へのフィット感を確かめなければ購入の踏ん切りが付かないものです。
オーダーメイドチェアが持つ柔軟さ
こうなってくると、自分でデザインした椅子を本職の家具職人さんにオーダーメイドするという選択肢が魅力的に映ります。希望する椅子のデザインや機能が明確ならその通り具体的にオーダーしましょう。
「50歳のオヤジが座ってもカッコよく見えるように」「スーツにも普段着にも自然な雰囲気で」と抽象的なリクエストから始めて職人と一緒に最高の椅子像を浮かび上がらせていく。書斎にある他の家具や自分の蔵書に合わせてほしいといった総合的な注文にも応えてくれます。
自らの手で真に価値のある椅子を創る。世界で一つ、最高の椅子と一生を共にする。制作過程を通じて得られる楽しさも多いでしょう。オーダーメイドの醍醐味でもあります。
豪華さを追わない一生モノの椅子には、自分の内面を映し出す価値があります。