相撲? コント? 禁じ手を連発する「初っ切り」相撲が面白い
日本伝統の国技、相撲は厳粛な雰囲気の中で真剣勝負の力士同士がぶつかり合い、一瞬で決着が付く。そこにお笑いの要素などもってのほか。のはずなのに、こんなの観たことない! そんなユーモアと意外性あふれる「一番」の世界があることをご存知でしょうか。テレビ中継される本場所では基本的に行われないため、存在自体を知らない方も多いかもしれません。地方巡業やNHK福祉大相撲などの花相撲で、取組の前に余興として行われることがあります。
反則技のオンパレード
初っ切りでは、背中から足蹴りにして突き落とすなど序の口。ボクシングのようなファイティングポーズでお互い軽快にジャブを打ち合い始めたり。土俵の上で、いつもと同じまわし姿の力士がやっているからシュールな絵面になってしまっています。テンポよく息の合った力士二人がコミカルに動き回り、漫才さながらにネタを披露。柄杓やほうき、スリッパのような小道具までも駆使して、相撲のルールを土台にした反則技の応酬が見どころです。
プロレスのような技の掛け合い
口に力水を含んで毒霧のように吹いたり、手四つに組んでから後ろを取ってバックドロップしようとしたり、もはや相撲とは別の格闘技。はっけよい、のこった、からの開幕ラリアットで奇襲など、やっていることは完全にプロレス。睨み合って威嚇したり、リング上、いえ土俵上で試合中に仁王立ちの舌戦が始まってしまうと、格闘技ですらなくただの口喧嘩の様相に。そんな「非日常的」光景がまた笑いを誘います。
行司も一緒になって悪ふざけ
力士二人の試合ですが、行司も心得たもので多少の反則はお情けで大目に見ます。仕切り直して次のネタへ導く「ツッコミ役」をこなしたり、その場の流れで力士に代わって相撲を取ることも。最後にはどちらかの力士に軍配を上げますが、負けた方の力士が行司の烏帽子をはたき落とすまでがお約束です。
孫と一緒に笑い合える貴重なスポーツ(?)
相撲観戦はお年寄り世代にとって生活の一部となっていたりします。初っ切りがテレビ中継されることはまずありませんので、お近くで花相撲が開催された際にはぜひ、お孫さんと一緒に生の相撲を観覧に訪れましょう。最初に初っ切りの雰囲気で相撲への敷居が下がり、次に始まる真剣勝負の取り組みが迫力満点で引き込まれるに違いありません。
この初っ切り、一見するとルール無用で自由奔放に暴れているように見えますが、だいたい定番の「台本」に沿って演じられています。さながら落語演目のように。その中で力士達によるアレンジが施されたり、その場の空気でアドリブが入ったりするんですね。だから全く同じ初っ切りは二度と観られない、一期一会の演舞なのです。
日頃の大真面目な取り組みがあるからこそ、そのお約束を破るギャップが面白いのでしょうね。