恐ろしい台風、でも実は恩恵を受けることも?
発生が遅かった台風1号、その後は台風がスピード発生、Uターン台風10号など、今年の台風シーズンは異例ずくめですが、今回、日本気象協会の気象予報士 吉田直人さんが解説した今年の台風傾向と、今後の予測についてご紹介します。
また、被害の大小に関わらず、台風にはネガティブな感情を持っている方がほとんどですが、実は台風がもたらす恩恵もあることをご存知でしょうか。台風のメリット面の一部もあわせてご紹介します。(「tenki.jpラボ」調べ)
記録的に遅かった台風1号の発生
2016年の台風1号は、観測史上2番目に遅い7月3日になってようやく発生しました。6月までの半年間、全く台風が発生しなかったという記録的な台風の少なさには、実は昨年の冬に日本にかなりの暖冬をもたらした「エルニーニョ現象」が関係していると考えられています。
エルニーニョ現象というのは、太平洋東部の赤道付近(南米沖)の海面水温が、平年よりも高くなる現象です。エルニーニョ現象自体は限られた地域の海面水温の変化ですが、地球の大気は1つにつながっているため、それに影響を受けて他の地域でも海面水温や対流活動(雲ができて雨が降る空気の流れ)に変化が起きてしまいます。そして、日本付近では例年台風が発生するフィリピン付近の太平洋で台風ができにくい気象状況となり、今年の6月までは台風の発生が少なくなりました。例外もありますが、エルニーニョ現象の翌年は、台風の発生が少なくなる傾向があります。
秋にはラニーニャが発生の可能性、台風への影響は?
今年の秋には、「ラニーニャ現象」が発生する可能性があります。ラニーニャ現象は、エルニーニョ現象とは逆に、太平洋東部の赤道付近(南米沖)の海面水温が、平年よりも低くなる現象です。
ラニーニャ現象が発生すると、「日本の近くで発生して急に日本に近づく台風が多くなる」と言われています。今年の台風11号が分かりやすい例ですが、8月20日9時に日本の東海上で発生したかと思えば、夜には東北地方に接近し、翌21日に三陸沖を北上して北海道に上陸しました。発生から上陸まで、約1日半のスピード台風でした。ラニーニャ現象が発生すると、このような台風が今後増えるかもしれません。急に台風が接近しても大丈夫なように、日頃から災害時の避難方法や連絡手段を確認し、非常持出袋や備蓄品の準備を行うようにしましょう。
水不足解消などには必要という声も
アンケート調査をおこなったところ、「台風」と聞くと、9割近くの人がデメリットを感じているようです。悪い面ばかりが取り上げられがちな一方、台風が発生することで果たしてメリットはあるのでしょうか?
台風が発生することでメリットはあると思いますかという問いには、33.7%の人がメリットがある(「大いにある」、「ある程度ある」)といった回答しました。性別と年代別にみると、40代男性では「ある程度メリットがある」と答えた人が44.0%も占めており、デメリットだけではなくメリットもある程度あると考えている人が最も多くなりました。