息子を愛する父が欲しかった時間
これは一人息子をもつ父の物語です。
嫁は亡くなり、男手一つで息子を育ててきました。
男親だからか、父親は厳しく息子を育てました。
「諦めるな 男の子だろ!」
決して口には出しませんでしたが、もちろん、思っていました。
「俺はお前が世の中で一番愛しい」と
(母の遺影が見守る父子二人の食卓)会話をする事もなく、無言で食事をするだけです。
息子はずっとギターに夢中で、父と息子は度々衝突してきました。
ある日、息子がついた嘘に怒り出す父。
息子は何かを隠していたのでしょうか。息子が、バンドの仲間の家に入り浸っていることを父は知っていました。
「出て行け!」
息子の不遜な態度に、思ってもない言葉を投げつける父。
しかし、愛する息子。
それでも聴いてあげたいと、今なら感じています。彼が伝えたいことを。
いなくなって感じる、謝りたいという気持ち。
「彼の歌を聞きたい」、そして話したいと心の底から思い、後悔します。
息子も同じ気持ちだったのでしょうか。
父は息子からコンサートに招待されます。
一路、車を走らせる父。
これまでの事を後悔しているのでしょうか。現実にはなかった息子との楽しい時間を頭に描きます。
分かりあった二人、笑いのたえない家族団欒。
息子の好きな音楽で父子共に楽しむひととき。
父は後悔するだけです。
「今よりも、もっと彼の相手をしてあげたかった。」
虚実が入り混じったようなこの物語の結末は、ご自身の目でお確かめください。