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1日1組だけ。奈良県宇陀市の1棟貸し古民家宿で「にほんの里100選」の眺望を堪能

田舎暮らしの本7月号では、田舎体験ができる宿を紹介している。里山の美しさは、雄大な自然と、脈々と続けられてきた人の営みが交わるところにある。奈良県宇陀市室生地区の深野には、まさに大自然と人の営みが生み出したパノラマの絶景がある。その風景に溶け込む、こだわりの古民家宿を訪れた。(文/近藤夏織子 写真/澤地武志)

 

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 奈良県宇陀市室生(むろう)地区の深野(ふかの)は、大自然と人の共同作業が生んだ絶景の里。「にほんの里100選」の美しい棚田が広がり、日本ユネスコ協会「未来遺産」である日本原種のササユリの保存活動で有名だ。この風光明媚な里に昨年、1日1組限定の1棟貸しの古民家宿「ささゆり庵」がオープンした。じつは近隣に住む私だが、憧れの里の気になる宿に泊まることになり、期待満々。宿への道を上って縁側に腰かけた途端、目前の眺望に頭が空っぽになる。そこには、下の道からはわからなかった、壮大な別世界があった。

 囲炉裏の自在鉤、巨大なクロマツの梁、茅葺きの深い軒と古民家のよさを残しつつ改修された家屋。その古いしつらえ越しには美しい棚田、奥には室生赤目青山国定公園(むろうあかめあおやまこくていこうえん)の雄大な山並みが広がる。気づけば、すべてを忘れゆっくりと深呼吸する自分がいた。「深野にふさわしい伝統家屋を徹底的に復元しました」とオーナーの松林哲司さん。宿のコンセプトは、消えつつある日本の原風景の再現。

「日本のよさを後世に残すためにも、大好きな深野に、日本の伝統文化が活きた宿を建てたいと思いました」

 

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 松林さんは大阪で貿易業を営んでいたが、深野に会社を移転。築約150年の古民家を購入した。被せてあったトタン屋根を撤去し、京都美山の茅葺き職人による葺き替えを決行。同じ室生地区の古民家から巨大なマツの梁とケヤキの大黒柱を移し、基礎から上屋構造まで大改修した。また宿からの眺望や景観にも配慮。宿前の電柱を撤去して地下配線にした。

 

 修験道行者でもある松林さんの指導で、法螺貝、尺八、和太鼓などの無料体験ができるとのことで初心者ながら、早速リクエスト。背筋が自然と伸び、無心に息が出る。鳥のさえずり、カエルの声に溶け合う響きで、ますます忘我の境地。縁側から松林さんが法螺貝を吹くと、遠方の山並みから、くっきりと響きが返ってくる。日本の原風景のなか、大自然と自分がつながっているという感覚が満ちる。

 夕方から加わった家族も絶景と古民家にため息。伊賀牛のバーベキュー、囲炉裏の鍋、ヒノキ風呂、囲炉裏端の寝床などを堪能して大喜び。客室の母屋のそばに建てられた別棟「山人庵(やまとあん)」では、棚田を一望しながら湯に浸かれる壺風呂も楽しめる。雄大な非日常のなかの、懐かしい小さな日常だ。

 縁側の前、足元には、地元の「深野ササユリ保存会」が植えた、ササユリの芽が出ていた。長い歳月をかけ、花を咲かすササユリ。大切なものをしっかり守り育ててほしいと、ささやくように小さな苗が揺れる。地蔵尊が祭られているという、はるか彼方の山々に手を合わせた。

 

詳しい情報は、本誌20ページからの「癒やしと気づきを与えてくれる 絶景に建つ古民家の隠れ宿」にてご確認ください。

 

田舎暮らしの本7月号はこちら!

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記事提供元

サイト名 宝島オンライン
URL http://treasurenews.jp/archives/6368/

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